ハイダグワイ・ライエル島の東海岸にあるウィンディ ベイ。
Hlk'yah Llnagaay (ハヤブサの町) と呼ばれる夏の漁村があった場所である。
そして近年では、ライエル島での伐採に反対するハイダ族の抗議活動の重要な場所であった。
ハイダグワイには、優れたスギ、ツガ、トウヒ、シトカスプルースの森が存在する。
何千年もの間をハイダ族の人々は、この原生林を守ってきた。
彼らは、自分たちの文化と生活様式を維持するために木を選び、慎重に伐採をしていた。
1900 年代初め、入植者がハイダグアイでの大規模な産業伐採を始め、この生活様式を破壊した。それがハイダ族に経済的利益をもたらすことはなかった。
1950年代、更なる森林需要の高まりにより、カナダ政府はハイダ族のいないの島々の伐採権を、複数の伐採会社と請負業者に無断で譲渡し、島全土の大規模な伐採が行われ始めた。
1974年にはライエル島の島全土の伐採も決まり、ハイダ族とその支持者による産業伐採に対する抵抗が始まった。封鎖、民衆運動、法廷闘争、政府間交渉が繰り返されてた。そしてハイダ族の抗議活動により、ハイダグワイの半分以上の原生林が保護されている。
1993年のグワイハアナス協定の調印が、国立公園保護区や海洋保護区、ハイダ族遺産地域の創設につながった。
2013年、ハイダ族とカナダ政府が提携して20周年を迎えたことを記念してトーテムポールが建てられた。 彼らの歴史と森を、ぜひ知って欲しい。
Global Atlas of Environmental Justice
「ある島には温泉がある」と出発前に聞いていた。
温泉に入りながら、シャチの群れが泳いでいくのを眺めれるほど嬉しいことはない。
明日への期待はあるのだが、深い疲れがあった。
そのせいだろう、全員食事量が少しずつ落ちていた。
体は知らず知らずのうちに蓄積された疲労を感じ始めている。
それでも、旅が私たちの心を支えている。新しい発見や出会いが待っていることを知っているからだ。温泉はそんな私たちにとっての癒しの場であり、再び元気を取り戻すための大切な時間となる。
ウィンディ ベイのウォッチマンに別れを告げて、漕ぎ続けると美しい浜が見えてきた。
浜の石も小さく、すぐに裸足で歩きたくなった。地面は柔らかく、砂利が気持ちいい。
ホットスプリングアイランドと呼ばれる島。この浜からよく見えた。
島のウォッチマンに無線で連絡を取った。そしてみんなを見送り、焚き火の準備を始める。
夕飯はスパム缶を開けて、フライにしよう。今日のこのために缶ビールを大切に乗せてきていた彼のために。油を多めに持ってきてよかった。
きっと今頃、温泉の湯煙が立ち込める中、彼らは静かな時間を楽しみ、温かい湯に浸かりながら、心も体も少しずつ解放されていく。
体を休めるたびに、旅の思い出が鮮明に蘇ってくる。次のステップへと進む力を与えてくれるのだ。温泉の中で感じるこの瞬間も、旅の大切な一部であると実感する。
バーナビーナローズはモレスビー島とバーナビー島の間にある細い水路だ。
幅は 150 メートルほどで、ボートでも通行できるが、満潮時のみとなる。
大潮の最干潮時はカヤックでも底を擦らずに、進むのはまず難しい。
私たちが水路に近づくと、透き通った水が急速に浅くなり、吸い込まれるように狭い海峡を速い速度で流れていく。1日に 2 回来る干潮時には、さまざまな色、形、大きさの海の生物が姿を現す。 無数のウニ、レッドロッククラブと呼ばれるカニ。小魚。鮮やかなヒトデ。
そしてバーナビーナローズは野生保護区に指定されており、ここで降りること、生き物を獲ることは許されていない。もう少し南に下り、保護区から外れたところでカヤックを降りた。
カニを探しに行く。
その顔はまるで子供のような笑顔で、彼は夢中でカニを探していた。波打ち際には、真っ赤で鋏の大きなカニがいた。その大きなカニが浅場に顔を出すのを待ちわびていた。獲物を見つけるたびに歓声を上げる。彼の目には、自然の中に潜む無限の驚きが映っていた。自然と戯れることに歓びを感じていた。
長靴に水が入ってしまって、肩紐は落ち、ドロドロになって帰ってきた彼をみんなに見せたかった。子供の頃、本で見た冒険者のようなすごく良い笑顔だったから。
海面に浮かぶその巨大な体は、静寂を破るように水しぶきを上げた。
周囲の空気は一瞬止まり、そして活気づいた。私たちはその光景に目を奪われる。鯨の優雅な動きに合わせて、海鳥たちも一斉に飛び立った。鯨の息遣いが聞こえるほど近くにいると、自分がこの巨体にとって邪魔な存在となっていないかと心配になった。再び見える穏やかな動き。海面は揺れ、高い飛沫の柱が上がる。そんなことはなかった。私たちの存在など気にする素振りは一切ない。
遠くに目をやると、他の海洋生物たちも姿を見せ始めた。アザラシが魚を追いかけ、海鳥たちが空を舞いながら私たちを見下ろしている。これらすべての生き物が、ここの豊かな生態系を支えているのだと実感する。そして私たちが眠りについた後も、彼らは水しぶきを上げて光り、夜の海を巡っているのだ。
先頭の漕ぐ手が止まっていた。後ろからは風が裂けるような音が聞こえ続ける。
前方に眺めていた岩が、動き始めた。
「トドだ」と誰かが叫んだ。
その瞬間、私たちは一斉に視線を向けた。トドは、まるで岩の一部のように見えたが、その姿を現し始めた。岩をはじきながら動くその姿は、圧倒的な存在感を放っていた。風だと思っていた音は、トドの唸り声だ。周辺の岩礁のあちらこちらに群れをなし、顔を天に突き上げ吠えている。重なり合い、岩の多い海岸が活気に満ち、音で波がうねり始めた気がした。
威嚇されている。
トドは多種多様な動物を狩ることに長けている。獲物は、100 種以上の魚類 (ニシン、サバ、サケなど)、イカ、タコ、そして時にはアザラシの子などが含まれる。毛色は黄褐色で、濡れると暗い灰色に見える。休息のため、険しい岩をも簡単に登ることができる。
ライオンによく似た唸り声をあげ勢いよく海に飛び込んだのを見た瞬間。
カヤックの真下に来るのではないかと、最悪が過り、一瞬息が止まった。
トドは水中から何度か顔を出し、鼻を大きく動かして潜った後姿を消した。
西海岸から飛び出すように突き出た岬、ベンジャミンポイント。
村田からこの岬の話をよく聞いていた。「荒れる場所だ。」
スタート地から南下したこのエリアは、ハイダグワイの南端に近づき、太平洋のうねりが響き始める。南東の風が出てくると、天候は荒れ、気温が下り、厳しい風が吹く。
突き出した岩場が続く。今ここで荒れてしまうと、避けれる場所はあまりなかった。
マリンVHFを聞いていても、そろそろ天候がかわり始めようとしていた。
ベンジャミンポイントは、不気味なほど静かだった。
「さあ次はラズベリーコーブだ」
川、滝、沢、ここで水に困ることはない。
カヤックを漕いでいると、渓谷を下る水の音がする。深い山の中にある水源。透明度も非常に高い。しかし、水を取る際には必ず濾過または煮沸をする。上流で野生動物が同じく水を利用している可能性が非常に高いためだ。
水はなくなるたびに補充できるため、カヤックの荷物に15日分の水は含まれなかった。その日漕ぐ際に必要な量だけで済んだ。
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